「生活力」は、日常を自分らしく、そして安定して生き抜くための総合的な力を指します。学力や体力のように単純に数値化できるものではなく、 現実の暮らしを営む力 です。
他人に依存し過ぎず、自分の人生を自分で支えられる力を意味します。特に一人暮らし、独身生活、高齢期の自立などに直結します。
生活力を大きく分けると、次の6つの要素に分けられます。
家事を行う能力(生活スキル)事例
栄養バランスを考えて食事をつくる
部屋の掃除・整理整頓をして生活環境を整える
衣類を季節ごとに管理できる
経済的な力(金銭管理スキル)事例
収入を得て、生活できるお金を持つ
計画的にお金を使い、無駄を抑えながら暮らす
貯蓄や投資を行い将来に備える
健康管理能力 事例
栄養バランスの食事を摂れる
運動をしたり睡眠を十分にとり、心身を健やかに保つ
体調が悪ければ適切な病院に行く
問題解決力・適応力 事例
仕事を失ったら新しい仕事をみつける
家電が壊れたら修理・買い替えを決める
災害時に避難行動をとる
コミュニケーション能力(社会的つながり)事例
親戚・職場の人に最低限の交流ができる
役所や病院で適切にやりとりできる
必要なときに助けや相談ができる
精神的な安定を保つ能力 事例
孤独に負けない
自分の趣味をもつ
気持ちのコントロールができる
生活力の6つの要素を各要素ごとに詳しく解説していきます。
家事を行う能力(生活スキル)
①食事関連
毎食の献立を考えて食材の買い出しをします。使える範囲での食費や鮮度の良い食材、栄養のバランスも考えなければいけません。何よりおいしい料理でなければ、生活の豊かさも下がります。
食材を買ってきたら食材の保管も適切に行なわなければいけません。
作りたい料理・使いやすさを考えて調理器具も必要になってきます。買ってきた食材と調味料で調理していきます。できたら、配膳にお皿も必要になります。食後は食事・調理器具を洗い片付けし清潔に保ちましょう。
衛生面の知識が必要であり、火の管理もとても重要です。
プロほどの知識はなくても必要最低限の知識と技術は必要といえるでしょう。
自分が調理や片付けが向いていない、どうしてもやりたくないという人も少なくないと思います。外食やスーパーで総菜を使うのも良いと思います。しかし、その分食費がかかり栄養バランスに片寄りが出るので健康面や経済面も意識したうえで食事を考える必要があるといえるでしょう。
②住居環境
自分が住んでいる家を快適な居心地と時間を過ごせるように環境を整えて維持していかなければなりません。
掃除は各部屋(床・キッチン・トイレなど)をしていきましょう。掃除器具や適切な洗剤を準備して行います。家の中だけでなく、庭や玄関前なども雑草やクモの巣などを除去して景観をよくしていきましょう。
一日着た衣類は洗濯して次に着るために収納しておく必要があります。最近は洗濯乾燥機(ドラム式洗濯機など)で乾燥まで行うものも多くなってきました。通常の洗濯機の場合は洗濯したものを干す作業も必要になってきます。
乾いた洗濯物はタンスなどに衣類を収納しておきましょう。洗濯洗剤・柔軟剤など自分にあったものを選択していきましょう。
生活するとゴミは必ず出てきます。ゴミ出しには地域のルールがあるので、ルールに従って出す必要があります。
生活管理関係
一般的に毎月給与が支給される人が多いと思います。
家計管理(光熱費・食費の把握)を行い次の給与までに使える生活費を管理していきます。借金しないように管理していく必要があります。特別な出費(冠婚葬祭や車検・病院受診入院費など)も考えて貯蓄もしていく必要があります。
今はスマホで家計簿をつけれるアプリなど自分にあった管理方法を行いましょう。
クレジットカードや消費者金融など返済できない借入などで苦労する人も多くいます。軽い気持ちで多額の借り入れで自己破産・ブラックリストなどで今後の人生にも影響が出てしまいます。まずは、両親や信頼できる親戚・知人に相談しましょう。
生活すると役場や公共料金の請求書など様々な書類が送られてきます。その書類を理解し保管する必要が出てきます。提出や支払い期限のある書類など適切に処理保管する必要があります。
生活用品・備品などの在庫の管理をしましょう。洗剤や文房具、乾電池など必要な消耗品を把握管理しましょう。
家族関係
家族がいる場合は家族の生活サポートも行う必要がでてきます。子育て(送り迎え、仕送り)親の医療・介護サポートなどがあります。
家事が果たす役割
- 生活の質を守る:清潔で安全な空間を維持する。
- 健康を支える:栄養バランスの取れた食事や衛生管理。
- 心の安定:整った住環境は精神的な安心感を与える。
- 家族関係の潤滑油:協力して行うことで絆が深まる。
家事をラクにする工夫
- 家電を活用する:食洗機・ロボット掃除機・乾燥機付き洗濯機。
- ルーティン化:曜日ごとに掃除場所を決める、週末にまとめ買いする。
- ミニマム化:物を減らすと掃除・整理が楽になる。
- 分担とシェア:家族・同居人と負担を公平に分ける。
家事のまとめ
昔は「家事=女性の役割」とされていましたが、今は男女関係なく担うべき「生活力」として位置づけられています。
特に一人暮らしや共働き家庭では、家事を効率化しながら分担する工夫が欠かせません。
家事は「暮らしの基礎を支える無形のインフラ」です。家事に苦手意識がある方も多いと思います。しかし誰かが担わなければ生活が成り立たないため、技術や工夫を身につけることは「生活力」や「個の経済力」にも直結します。
経済力・金銭管理能力
生きていく為に必要なお金。結婚の条件にも高収入、年収~万円以上などの話もよく聞きます。経済力と聞くと稼ぐ力をすぐに思い浮かべる人も多いですが、イザという時のために貯金したり、浪費せず節約したりと長い将来を見据えた金銭スキルは重要といえるでしょう。
- 収入を得る力(稼ぐ力)
働いて収入を得る力(就職・副業・起業など)生活の基盤でもある能力です。仕事をして心身が不調となる。職場の人間関係が悪化して転職を繰り返してしまっては安定した生活とはいえません。継続して安定した収入を求める為には、就職先や正社員、副業、などいろいろな方法があります。
収入アップや安定した就職を得る方法に専門スキルや資格の取得があります。就職活動で資格は有利になる場合もありますし、資格がないと就けない職業もあります。また、会社などで資格手当などもある場合があります。
- 支出を管理する力(使う力)
給料が入って一週間で得た給料全部使ってしまったなどという話をよく聞きます。いくら多くの給与を得ても浪費やギャンブルに使ってしまい必要な生活費が足りなくなってはいけません。自分の欲望に任せず、計画的にお金を使う力も稼ぐ力と同じくらい大事といえるでしょう。
- 資産を守る力(貯める力)
人生にはリストラや病気など思いもよらぬトラブルが起きます。そんな緊急時に貯金もなく大きく借金してしまっては安定した生活とはいえません。毎月少しづつ貯金したり、保険に入ってリスクヘッジで暮らしを守る必要もあるでしょう。また、詐欺や無謀な投資話にのってしまったりして資産を失うことにも注意する必要もあります。
- 資産を育てる力(増やす力)
ただタンス預金するより、NISAなどを利用したりし自分の資産を増やす知識も必要でしょう。金融商品は大変多くあり、より安全で効果的な商品を選択し自分の財産を増やす知識もあれば、貯蓄や投資でお金を増やして豊かな生活が実現できるでしょう。
経済力が重視されてきた背景
- 終身雇用や年功序列の崩壊
→ 会社に依存せず、自分で生き抜く力が必要になった。 - 社会保障の不安定化
→ 年金や医療制度に頼りきれないため、自助の力が大切に。 - 副業・フリーランスの拡大
→ 自分のスキルや時間を使って、複数の収入源を持つ時代。
経済力を育てる方法
- 学ぶ:金融リテラシーを高める(お金の仕組み、税金、投資、ローンなど)。
- 稼ぐ:スキルアップ、資格取得、副業で収入源を複数持つ。
- 守る:家計簿や固定費の見直し、リスクに備えた貯蓄・保険。
- 増やす:小額からでも投資を始め、長期的な資産形成を目指す。
健康管理能力
- 自己観察力
まずは、自分の体調や気分の変化に気づけることです。今日は睡眠不足で集中力が落ちているなと自覚したり、風邪気味で寒気がするなど自分の体調を気にする必要があります。
- 生活習慣を整える力
食事・運動・睡眠をバランスよく管理する必要があります。規則正しく生活することで、日々の生活が安定します。不規則な生活を続けていくと心身の不調が顕著に表れやすくなるでしょう。自分に合った食事・睡眠時間・運動量を見極めていきましょう。さらに、年齢によって徐々に自分に合った食事なども変化していきます。定期健診などで自分の弱点を見つけたらそれに合った食事や運動をしていきましょう。
- 予防の意識
病気を未然に防ぐための行動をりましょう。手洗い・うがい、定期健診、ワクチン接種などで未然に病気から守る必要があるでしょう。歯科検診などは大人になってからは、自分から歯科にいき行う必要があります。
- ストレスマネジメント
生活していると仕事や家庭でストレスを抱えてしまいます。心の健康を保ち、過度な緊張や不安を調整していきましょう。趣味やで気分転換したり、悩みを友人に相談したりして解決していきましょう。
- 医療との連携
体調がおかしいなと思ったときは、放置せずに病院へ行き、指示に従って治療や検査を受けましょう。不調の原因を知ると知らないでは心の不安もなくなるでしょう。
健康管理能力が高い人の特徴
- 自分の体調に敏感で、無理を長引かせない
- 習慣的に運動や食生活を整えている
- 定期的な検診や予防策を怠らない
- ストレスを抱え込みすぎず、上手に解消できる
- 情報を取捨選択し、流行に振り回されない
健康管理能力を高める方法
- 小さな習慣を積み重ねる
- 朝起きたらコップ一杯の水を飲む
- 夜はスマホを寝る1時間前に置く
- 記録する
- 睡眠時間、歩数、体重をアプリで管理する
- 日々の体調日記をつける
- 予防を意識する
- 年に1回の健康診断
- 季節に応じた体調対策(花粉症・夏バテ・冬の乾燥)
- 心のケアを習慣化する
- 瞑想・深呼吸・趣味でリフレッシュ
- 人と話す時間を持つ
健康管理能力とは 「自分の体と心を自己マネジメントする力」 です。
これは体力や学力と同じように鍛えられる力であり、将来の病気リスクを減らし、生活の質を高める大切な基盤になります。
コミュニケーション能力
「生活コミュニケーション能力」とは、日常生活を営むうえで必要となる、人とのやりとりを円滑に進める力を指します。職場や学校だけでなく、家庭、地域社会、友人関係、買い物やサービス利用の場面など、生活のあらゆる場で必要になる能力です。
①基本的なやりとり
生活には必ず人との関わりが生まれます。一番簡単なコミュニケーションががあいさつといえるでしょう。また礼儀、感謝や謝罪を伝える力も必要になってきます。
②情報を伝える力
自分の要望や意見をわかりやすく表現する力お必要です。買い物で欲しいものを店員に伝える、病院で症状をうまく説明できなければなりません。会話が苦手という方も前もって話す内容をまとめたりするといいでしょう。
③相手を理解する力(傾聴)
相手の言葉や表情を理解することも必要でしょう。仕事でお客や職場の上司の会話の内容を理解しなければトラブルになることもあります。人は聞くより話す方を優先してしまいがちです。意識的に人の話を聞く姿勢を持つようにしましょう。
④協力・調整の力
立場や考えの違う人と協力して物事を進める力とは、家事分担を話し合って決めたり、仕事でチーム分担して業務を進める場面もでてくることでしょう。協調性と自主性をうまくコントロールする力が必要になってきます。
⑤感情のコントロール
疲れや感情がいら立っている時期があるときに、周囲に怒りや不安をそのままぶつけず、適切に表現する能力です。感情のままに人に当たり散らかすと自然と周囲から孤立してしまいます。イライラしても冷静に言葉を選び感情のコントロールをしましょう。
生活コミュニケーション能力を高める方法
- あいさつと感謝を習慣にする
→ 「ありがとう」「助かるよ」の一言で人間関係が良くなる。 - 相手の話を遮らず最後まで聞く
→ 相手は「理解してもらえた」と安心する。 - 自分の意見を整理して伝える練習
→ 要点を短くまとめる習慣をつける。 - 表情や態度を意識する
→ 笑顔やうなずきは言葉以上に安心感を与える。 - 多様な人と接する経験を増やす
→ 世代や立場が違う人と交流することで柔軟さが育つ。
生活コミュニケーション能力とは 「暮らしを円滑にし、安心できる人間関係を築く力」 です。
問題解決力
「生活における問題解決力・適応力」は、予想外の出来事や困難に直面したときに、落ち着いて対処し、自分の生活を立て直す力を指します。これは「生活力」の中核的な能力で、時代や環境が変化する現代では特に重要です。
問題解決能力が必要な例
家電が壊れた → 修理・買い替え・代用品の検討
収入が減った → 支出の見直し、副収入の検討
人間関係の不和 → 話し合い、距離の取り方を考える
問題解決能力を上げる方法
- 状況を整理する力:感情的にならず、事実を見極める
- 情報収集力:ネット・専門家・友人などから知識を得る
- 行動力:考えた解決策を試す勇気を持つ
- 振り返り力:うまくいかなかったとき、原因を学びに変える
適応力とは
環境の変化や予想外の出来事に柔軟に対応できる力。
具体例
- 引っ越しや転職 → 新しい人間関係や生活習慣に慣れる
- 天候不順 → 屋外の予定をキャンセルし、代替案を見つける
- 技術の進化 → 新しい家電やアプリを取り入れて暮らしを便利にする
鍛えるポイント
- 柔軟な思考:完璧主義より「とりあえず試す」姿勢
- 変化を楽しむ心:新しい体験を拒まずチャレンジする
- 複数の選択肢を持つ:プランBや代替案を常に用意する
- ストレス耐性:心身の健康管理で動揺しにくくなる
生活での実例
- 電車が止まった
問題解決力:他の路線やバスを調べる
適応力:到着時間の変更を受け入れ、予定を調整する - 突然の出費が必要になった
問題解決力:家計を見直し、不要な支出を削る
適応力:しばらく質素な生活に切り替える - 仕事や学校の環境が大きく変わった
問題解決力:必要なスキルや情報を学ぶ
適応力:新しい仲間や文化に合わせて行動を調整する
なぜ問題解決力が必要か
- 予測不能な社会(自然災害、経済不安、技術革新)が増える現代で必須
- 精神的な安心感を高め、ストレスを軽減できる
- 自立した生活力につながり、周囲から信頼される
🔹まとめると、
- 問題解決力=具体的に「どう対処するか」を考える力
- 適応力=「変化を受け入れ、調整できる力」
この2つが合わさることで、生活の中でトラブルに振り回されず、むしろ成長や新しい可能性につなげられます。
精神的な力
「生活における心の安定・精神的な力」とは、日常の中で起こるストレスや不安、予期せぬ変化に対して、心を落ち着けて健やかに生きるための力を指します。これは「生活力」の中でもとても重要な基盤であり、他の力(経済力・家事力・健康管理など)を支える土台となります。
- 自己理解
- 自分の気持ちや弱点を把握し、無理をしすぎない
- 例:疲れているときに「今日は休もう」と判断できる
- 感情のコントロール
- 怒り・不安・焦りをそのまま行動にせず、調整できる
- 例:イライラしても深呼吸してから言葉を選ぶ
- ストレスマネジメント
- 趣味・運動・休養で心を切り替える方法を持つ
- 例:散歩や音楽でリフレッシュする
- レジリエンス(回復力)
- 失敗や挫折から立ち直る力
- 例:試験に落ちても次の計画を立て直せる
- 人とのつながり
- 信頼できる人に相談できる力
- 例:友人や家族に悩みを打ち明けられる
- 意味づけの力
- 困難に意味を見いだし、成長の機会に変える
- 例:「大変だったけど、いい経験になった」と振り返る
日常生活での実例
- 仕事や勉強で失敗した
→ 自分を責めすぎず「次にどう生かすか」を考えられる - 人間関係でトラブルが起きた
→ 感情を整理して冷静に話し合える - 病気や災害など予期せぬ出来事
→ 混乱しても、できることに目を向けて対応する
心の安定を保つ習慣
- 睡眠・食事・運動のリズムを整える(身体の健康は心の安定に直結)
- 日記やメモで感情を「見える化」する(不安を外に出す)
- 呼吸法・瞑想・マインドフルネス(心を今に戻す)
- 小さな達成感を積み重ねる(家事を片付ける、散歩するなど)
- 人との会話や交流(孤立せずに支え合う)
現代的な課題
- 情報過多 → ネットやSNSによる不安・焦燥感
- 孤独感 → 核家族化や一人暮らしで支え合いが減る
- 不安定な社会状況 → 経済・環境・災害などによる慢性的ストレス
まとめ
生活における心の安定・精神的な力とは、
- 自分の心を観察し、
- 感情を調整し、
- 困難から回復する力。
これは特別な才能ではなく、日々の習慣と環境作りによって育てられる力です。まさに「安心して暮らすための見えないインフラ」と言えるでしょう。
まとめ
生活力とは、日々の暮らしを自分で整え、安定して生きていくための力のことです。単にお金を稼ぐ力だけでなく、家事をこなし、健康を守り、人と関わりながら社会の中で生きる総合的な力を指します。
長い人生の中で事故やトラブルなどにも適切に対応し、挫折にも乗り越える強さも必要です。若いころに苦労した方がいいとよく言われるのもそのような理由があるのでしょう。
大切なのは、日々の小さな準備など出来ることをコツコツ積み重ねることでしょう。苦手な要素でも最低限の能力をつけることも大事ですが、得意なものを伸ばすことも必要です。
自分の幸せのために6つの要素を理解し、今日という日を丁寧に生きていきましょう。

