和顔愛語 ― やさしさが人をつなぐ力 ―
あなたは、いつも人と会っているときにどんな表情でどんな言葉で会話していますか?
和顔愛語は仏教や禅の教えの中にある言葉で、「やさしい笑顔(和顔)と、思いやりのある言葉(愛語)で人と接すること」を意味します。
とても短い言葉ですが、日常生活の中でとても大切な心のあり方を教えてくれています。
「和顔愛語」の意味
まず、「和顔」とは「和やかな顔」「おだやかな笑顔」という意味です。
むすっとした顔や、怒ったような表情ではなく、相手を安心させるようなやさしい顔のことです。
「愛語」は、「愛のある言葉」「心のこもった言葉」という意味で、相手を思いやる言葉づかいを指します。
つまり、「和顔愛語」とは、笑顔と思いやりのある言葉で人に接することを表しています。
なぜ大切なのか
人は、ことばや表情によって気持ちが大きく変わります。
たとえば、友だちが落ち込んでいるときに、「大丈夫だよ」「一緒にやろう」と声をかけられたら、少し元気が出ますよね。
そのときに、本当に心配した真剣な表情で言ってくれたら、もっともっと安心できるはずです。
反対に、同じ言葉でも、冷たい表情や面倒くさそうな言い方をされると、嫌な気持ちやつらい気持ちになりますよね。
つまり、人の心は会話の「内容」だけでなく、「心のこもり方」や「伝え方」によって大きく変わってしまいます。
和顔愛語の大切さは、まさにそこにあります。
日常生活の中の「和顔愛語」
この教えは、日常のあらゆる場面で生かせます。
たとえば、学校生活を思い出してみましょう。
- 友だちが忘れ物をして困っているときに、「貸してあげるよ」とやさしく声をかける。
- 部活動でミスした仲間に、「またがんばろう、大丈夫だよ」と笑顔で励ます。
- 友達が危ない行動をした時に真剣な表情で、「ケガするよ。危ないよ」と真剣に注意する。
こうした小さな行動が「和顔愛語」です。
それは特別なことではなく、日常の中でだれにでもできるやさしさなのです。
言葉の力と表情の力
「ことばには力がある」とよく言われます。
その力は、人を傷つけることも、人を支えることもできます。
たった一言で相手の一日が明るくなることもあれば、暗くなることもあります。
だからこそ、私たちは言葉を大切に使わなければなりません。
また、表情にも同じような力があります。
笑顔であいさつされたとき、こちらまでうれしい気持ちになりますよね。
それは、表情が人の心をやわらげ、信頼を生み出すからです。
「和顔」は、まさにその信頼や安心をつくる第一歩なのです。
一方で、私たちはつい、疲れていたりイライラしているときに、無意識に冷たい態度をとってしまうことがあります。
学校で嫌なことがあってイライラしたまま家に帰ってきた時に、親から「ちょっと手伝って」と言われたときに、「今は、無理!」と強い言い方をしてしまったり、
友だちに「それは違うよ」と言う時に、相手を見下したり失笑した表情だと相手を傷つけ、嫌な気持ちにさせてしまうこともあります。
そんなときは、「今、自分は和顔愛語から離れているな」と気づくことが大切です。
やさしい言葉を使うというのは、「相手を思いやる自分の心を育てる」ということでもあるのです。
現代では、SNSなどを通して簡単に言葉を発信できるようになりました。
でも、その分だけ、顔が見えないやりとりの中で、冷たい言葉や傷つくコメントも増えています。
そんな時代だからこそ、和顔愛語の心がいっそう大切になっています。
たとえば、SNSのコメントでも、「いいね!」や「すごいね!」というひとことが、相手の勇気になることがあります。
「和顔愛語」は、リアルな世界だけでなく、インターネットの世界にも通じる、人と人をつなぐ基本の心です。
自分を大切にする「和顔愛語」
実は、和顔愛語は「他人のため」だけではありません。
笑顔でいると、自分の心も明るくなります。
やさしい言葉を使うと、自分の気持ちも落ち着きます。
つまり、和顔愛語は自分を幸せにする方法でもあるのです。
怒りや不安でいっぱいになるときこそ、深呼吸して、にっこりしてみましょう。
それだけで少し心が軽くなります。
その小さな笑顔が、まわりにも自分にもよい影響を広げていくのです。
やさしさの連鎖を広げよう
「和顔愛語」とは、
笑顔とやさしい言葉で人に接すること。
それは、だれにでも今すぐできる思いやりの実践です。
そして、それを続けていくことで、まわりの人たちが安心し、信頼し合える関係が生まれます。
勉強やスポーツが得意でも、いつも怒った顔・不機嫌な顔をしてたり、言葉使いが「うるせ~」「バカじゃない?」「どけよ」など乱暴な言葉を使う人はどんどん自分から人は離れていきます。
これは大人の社会でも同じなのです。
笑顔や言葉は、まわりの人の心をあたたかくし、自分も心地よくなれます。
最後に
笑顔とやさしい言葉で人に接することは、誰でも今すぐできることです。
仏教の教えにこんな言葉があります。
「やさしい笑顔は、お金のいらない贈り物。」
和顔愛語とは、まさにその「贈り物」を毎日おくることなのです。
どんな人でも人は誰かに支えられて生きています。みんなののやさしさが集まれば、みんなが、もっとあたたかくなります。

