みなさんは「自分らしく生きよう」と言われたことはありませんか?最近では、SNSでも「ありのままの自分が一番!」という言葉をよく見かけます。
でも、そんな中に「和光同塵(わこうどうじん)」という、まるで逆のような禅の教えがあります。この言葉を直訳すると、
「光(自分の才能や知恵)を和らげて、塵(ちり)=世の中の人と一緒になる」
つまり、自分のすごさや特別さをあえて見せず、まわりの人たちと同じように暮らすという意味です。
「え?なんでそんなことするの?すごい人はもっと目立つべきでは?」
…そう思いますよね。でも、この言葉にはとても深い意味があるのです。
光をやわらげて、ちりと同じように過ごす
和光同塵は、中国の古い思想家・老子(ろうし)の言葉がもとになっています。老子は「無理に目立たず、静かに力を発揮することが大事」と考えた人でした。
たとえば、川の水は低いほうへ流れていきますよね。山の上からドーン!と力強く落ちてくる滝ではなく、静かに流れる川のような生き方を老子はよしとしました。
禅でもこの考えをとても大切にしています。
本当にすごい人は、それを見せびらかさない。
まわりの人に合わせて、静かに、自然に生きる。
これが「和光同塵」の心です。
人を見下さず、周りに目を向けるやさしさ
学校生活では、目立ったり、みんなより成績がよかったりすると、うらやましがられたり、逆にイヤミを言われたり…そんなこともありますよね。
たとえば、テストで100点をとった子が、
「えっ、100点!? まじめかよ〜!」
なんて、からかわれたりします。
そんなとき、「目立たずにいよう…」と感じるかもしれません。
でも、和光同塵は「目立たないようにビクビクしろ」ということではありません。
そうではなくて、
本当に強い人は、人を見下さないし、出しゃばらない。
まわりに合わせながら、必要なときに静かに力を出す。
という教えなのです。
つまり「見せない=弱い」ではなく、「見せない=強さとやさしさ」なんですね。
自分の力をみんなの役に立てよう
たとえば、こんな人がいたらどうでしょう。
- クラスで一番スポーツがうまいけど、いつも周りをフォローしてくれる。
- 勉強ができるけど、自慢しないでさりげなく教えてくれる。
- 人気者だけど、自分だけで目立たず、みんなを引き立てる。
こういう人って、すごくかっこよくないですか?
それが、「和光同塵」の生き方です。
つまり、自分の才能や力(=光)をただピカピカ光らせるのではなく、あえて和らげて、まわりの人と同じ目線で接する。
そうすることで、まわりの人が安心し、自分も自然に力を発揮できるようになります。
最後に、
やわらかな光のように生きよう
「和光同塵」は、決して「自分を押し殺せ」という教えではありません。
- 自分の力を大切にする。
- 無理に他人に見せびらかさない。
- 必要なときに、そっと差し出せるやさしさを持つ。
自分の特技や得意なことは困っている友達を助けたり、教えてあげたりと人の役に立つように使うことで自分がさらにみがかれていくことでしょう。
そんな人になれたら、学校でも家庭でも、どこでもきっと信頼されるはずです。
太陽のようにまぶしくなくても、月は静かに、でもしっかりと夜道を照らしてくれます。
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