子どもと学べる禅語 一行三昧(いちぎょうざんまい)~目の前のことだけに集中して取り組もう~

集中できない今の私たち

今の時代、まわりにはいろんなものがあります。スマホ、ゲーム、動画、SNS…。何かをやっていても、すぐに気が散ってしまいますよね。たとえば勉強中に通知がきて、ついスマホを見てしまったり、テレビを見ながらごはんを食べたりして、「なんとなく」「~しながら」で過ごすことが多くなっています。

でも、そんなふうに色々なことに気を取られてばかりだと、どれも中途半端になってしまいます。「さっき何をしていたか覚えていない」「ちゃんとやったはずなのに、あまり身についていない」なんてこと、ありませんか?

そんな今の私たちにこそ、大切にしたい言葉があります。それが、仏教や禅で伝えられてきた「一行三昧(いちぎょうざんまい)」という教えです。

「一行三昧」とは何か?

「一行三昧」は、漢字を分けて見ると意味が見えてきます。

  • 「一行(いちぎょう)」は、「たった一つの行い」「一つのこと」。
  • 「三昧(ざんまい)」は、心が一つに集中した状態のこと。

つまり、「一行三昧」とは、

たった一つのことに、心をこめて、全力で取り組むこと

という意味です。

何かをやっているとき、他のことを考えず、そのことだけに集中して取り組む。これが「一行三昧」の生き方です。これは特別な修行ではなく、私たちの日常の中でも実践できます。

一行三昧を実際にやってみると?

では、実際に「一行三昧」がどういうものか、日常の例を使って考えてみましょう。

例1 ごはんを食べるとき

スマホを見ながら、テレビを見ながら、ごはんを食べていませんか?そうすると、何を食べたかよく覚えていなかったり、「なんか食べ足りないな」と感じたりすることがあります。

でも、ごはんの色、におい、味、食感に集中して、一口ずつゆっくりと味わって食べてみるとどうでしょうか?「おいしい」「ありがたい」「作ってくれた人に感謝しよう」そんな気持ちが自然に出てきて、心も体も満たされるようになります。

これはまさに「食べる三昧」、つまり「一行三昧」です。

例2 部活動の練習

たとえば野球部の素振り。なんとなく回数をこなすだけでは、うまくなりません。でも「いま、この1回を本気で振る」「フォームを確かめながら、心をこめて振る」と決めてやれば、確実に成長していきます。

1回1回を大事にする。集中して取り組む。これも立派な「一行三昧」です。

今この瞬間に心をこめる

「一行三昧」は、禅の中でもとても大切にされている考え方です。禅では、「今ここに生きること」を重視します。「過去の失敗」や「未来の心配」にとらわれず、「いま、目の前のこと」に心を向ける。それが、ほんとうに生きているということだと教えているのです。

集中する力がつけば、心も落ち着き、自分に自信が持てるようになります。そして、どんな時でもブレない強さが身についていくのです。

おわりに

どんなことでも「今この瞬間」に集中して取り組めば、それが「一行三昧」になります。

一つ一つの行動に心をこめて生きることは、自分を大切にすることにもなり、まわりの人を大切にすることにもつながります。忙しい毎日だからこそ、目の前のことに全力で向き合い一つ一つを丁寧に過ごしていけば、自分の目指す人生になってくれるはずです。

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